【感想】映画『怒り』が描き出すのは人間の真髄?3つの物語で紡がれる驚きの伏線を徹底考察!

3つの異なる物語が見事な手腕で繋がる映画『怒り』。『怒り』では豪華なキャスト陣がこれまでにない新たな顔を魅せていき、それぞれが抱える”怒り”が描き出される。見事な描写で紡がれた『怒り』を徹底考察!

2018年4月26日更新

映画『怒り』のあらすじ

まずは映画『怒り』のあらすじを完結にご紹介しよう。

『怒り』は、東京・千葉・沖縄という3つの異なる地で物語が進展していく。
ある夫婦が惨殺された現場に「怒」の血文字を残して未解決となった事件から1年後、犯人は「山神一也」という人物だと判明するものの、整形手術をして逃亡を続けているという。
疑わしいとされるのは3人の男。
千葉県・房総の田代哲也、沖縄の離島にいる田中信吾、東京都内の大西直人。
それぞれの地でそれぞれの男に出会う人々の葛藤を描く群青劇である。[出典1]

▼映画『怒り』予告編がこちら

『怒り』のテーマは”愛する者を信じる難しさ”か

映画『怒り』では、昨今話題となっている社会問題が多く描写された印象だ。
性的マイノリティーといわれるLGBT(ゲイシーン)、沖縄の米軍基地・慰安婦問題、そしてさらに身近な親と子の溝、どれを取っても1本の映画が完成しそうな題材を、李相日監督は見事に紡ぎ合わせている。
それだけではなく映画の主軸はこれらの社会問題ではなく登場人物の演技や心に抱えた”怒り”に帰着させている手腕はお見事の一言であろう。
そのような中で、『怒り』は通して描かれた一つの根幹となるテーマは”愛する者を信じる難しさ”ではないだろうか。
愛する恋人、愛する我が子、愛する仲間、そうした”愛する者”を信じ切りたいのにどこか湧いてしまう疑念。
愛と疑が表裏一体となった、まさに人間の感情の本質とも言えるテーマを見事に描ききった映画となっている。
李相日監督自身も、

『怒り』はミステリー・ジャンルの体裁をしていますけど、
核心にあるのは犯人捜しや謎解きとかじゃなくて、
「信じることの難しさ」あるいは「人を疑ってしまうことの闇」。
その心の闇が僕はいちばんの謎というか、ミステリーだと思っているので。
それが“怒り”という観念とつなげられたら、「怒りとはなんぞや?」っていう出口に、最終的には何とかたどり着けるんじゃないかなって。[出典2]

と語っている通り、人間が抱える闇を感じる一作である。

映画『怒り』がもたらしたキャスト陣の新たな顔

『怒り』には豪華すぎるほどのキャスト陣が出演しているが、どのキャストもそれぞれの”怒り”を抱えているようにみえる。
それぞれの登場人物を演じるキャストが正しくその自我を持ち合わせたかのような見事な演技からは、相当な覚悟で役作りに臨んだ様子が窺える。
特に目を引くのが、どの俳優もこれまでのイメージとは異なる雰囲気を醸し出しており、にも関わらず見事に作中に溶け込んでいる芝居である。
それぞれのキャストごとにその”新たな顔”をみていこう。

渡辺謙

千葉パートで宮崎あおい演じる愛子の父親役・洋平を演じた渡辺謙
ハリウッドでも活躍し、『GODZILLA ゴジラ』や『許されざる者』など過激で熱い演技を魅せることも多い渡辺謙だが、『怒り』の洋平役ではどこか抑制した様子すら見受けられた。
家出をして東京の風俗で働いていた愛子を見つけたシーンも、愛子が素性不明の男・田代と恋に落ちいていくシーンも、父親としては叱咤してよい場面である。
しかし、むしろ自身の感情を抑え、愛する我が子にどこか諦めの感情すら抱いているようにみえる。

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宮崎あおい

千葉パートで素性不明の男・田代に惹かれていく愛子役を演じた宮崎あおい
30歳を迎えながら少女のような清楚なイメージが抜けない宮崎あおいだが、『怒り』ではあえてのノーメイク演出。
父に甘えつつもどこか淋しげな表情を魅せ、少女のように振る舞う愛子そのものである。
また、この愛子役は原作では”ぽっちゃり”しているという設定であり、宮崎あおいのイメージとはかけ離れている。
役作りのために7キロ以上もの増量で臨んだといい、李相日監督も

基本的に僕は原作のルックを再現しようとは全然思わないんですよ。
もっとキャラクターの根っ子にあるものでキャスティングしたいと常々思っていて、愛子にある危うさと純粋さを考えた時、僕の中であおいちゃんのことが浮かんだんですね[出典2]

と語っている。
映画を観るとまさにはまり役であることがわかるであろう。

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松山ケンイチ

松山ケンイチは、これまで色の強いものを纏うことでくっきりした個性を出す役が多い印象であった。
しかし『怒り』で魅せた田代は原作でも最も余白が多い人物で、李相日監督も「過剰な要素を全部削ぎ落とした、素っ裸の俳優・松山ケンイチの姿を見せてもらえる」と語っているように、何を考えているかわからない、良い意味で色のない役どころを熱演していた。

妻夫木聡

東京パートで大手広告代理店で働く、同性愛者・藤田優馬を演じた妻夫木聡の演技は圧巻の一言。
ノアのCM”のびた”役を演じている俳優とは思えないほど、ゲイにしか見えない個性溢れた役どころをこなした。
『悪人』で吉田修一原作、李相日監督タッグを経験し、主演を張っただけあるという貫禄の演技で、少し過激とも思えた綾野剛とのゲイシーンは目を背けたくなるほどの迫力。

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綾野剛

東京パートで素性不明の男・大西直人を演じた綾野剛
カメレオン俳優と言われるだけあり、役者としても正体不明な部分がある綾野剛は、『怒り』の中では闇を抱えた同棲愛者の役を演じ、妻夫木聡とゲイシーンを演じている。
役作りのために妻夫木聡と実際に共同生活をしたというエピソードは驚くばかりだが、作中で魅せる繊細でキメの細かそうなキャラクターは正しく直人そのものであった。

森山未來

沖縄パートで無人島生活をする素性不明の男・田中を演じた森山未來
泉や辰也に同情の念を抱き、優しく接するも素性の知れぬ謎の男。
己の道を突き進むその意志を感じる目は、まさにはまり役であったように感じる。
クライマックスで魅せた”あの”シーンはこれまでの森山未來とは異なる『怒り』が生み出した新たな一面であった。

広瀬すず

沖縄パートで泉役を演じた広瀬すずは、本作『怒り』の中でも最もカギを握る人物と言ってもいいのではないだろうか。
まさに少女という清楚なイメージと裏腹、『怒り』で一皮剥けたなという印象である。
原作に惹かれ自ら泉役のオーディションを買って出たというが、米兵にレイプされ泣き叫ぶシーンはもちろんのこと、抱えた”怒り”の矛先も見えぬままに”魂の咆哮”を魅せたクライマックスは鳥肌モノであった。

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佐久本宝

沖縄の舞台に出演していた佐久本宝をみて李相日監督直々にオーディションに招待したという佐久本宝
演技はほぼ未経験という佐久本宝だが、内に秘めた”怒り”を抱える様子は見事に演じきっていたのではないだろうか。
沖縄の方言があちこちで出るのもまた味を出しており、本作『怒り』には欠かせないキャラクターであったと思う。

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3つの物語を繋げた伏線とカメラワーク

『怒り』では3つの異なる地で繰り広げられる物語が、見事なカメラワークや編集で紡がれていく。
観客からすると全く異なる物語を並列的に理解するのはいささか難儀であるように感じるが、そこをエピソードで繋げてしまう伏線と編集はお見事であった。

例えば、物語冒頭で犯人が犯行時に被っていた帽子は、次の瞬間事件から1年後の東京で愛子を探して繁華街を歩く、キャップを被った洋平の姿に切り替わる。
また、愛子を連れて帰るシーンでは、愛子が聴いていた東方神起の音楽を洋平に勧め、イヤホンで聴かせると同時に爆音が鳴り響き、東京パートのゲイパーティでとスイッチする。
さらに、体操座りで俯く直人に優馬が近づいていく出会いのシーンは同じように俯く辰也の部屋へ入っていく田中のシーンを、優馬がやや無理矢理気味に直人に近づきバックから挿入するシーンは、米兵にバックからレイプされる泉のシーンをそれぞれ彷彿とさせ、ここでも物語の繋がりがある。
そして極めつけは『怒り』の鍵を握るとも考えられる泉のレイプシーン後の涙の様子。
うつ伏せになりながら顔だけ横を向けて悲痛な表情を浮かべた泉は、田代の隣で俯く愛子、優馬に抱かれながら俯く直人も全く同様の体勢を取っていることがわかるだろう。

伏線は映像にとどまらない。
『怒り』では、意図的か各パートのシーンが突如寸断され、別パートに移るシーンがままあった。
それらのシーンでは登場人物が発する言葉が伏線となっているのである。
例えば、辰也が泉を映画に誘おうともぞもぞしているシーンでは、直後のカットで洋平が田代に対して「最近、愛子とちょくちょく出掛けているみたいだな」と訝しげな表情をみせるシーンの布石であろう。
また、借金取りから逃げているという情報を知り、風俗で働いていた自身の経験も踏まえて愛子が発する「私わかるんだよ。泣いたって誰も助けてくれない」という言葉には、泉がレイプされた後海辺で辰也に向かって「いくら泣いたって怒ったって、誰もわかってくれないんでしょ!」という悲痛の叫びを彷彿とさせよう。

このような映像や言葉で巧みに観客をリードする伏線と編集により、一瞬たりとも間延びしない緊迫した雰囲気を作中に与えているのであろう。

登場人物が抱えたそれぞれの”怒り”とは何だったのか?(ややネタバレあり)

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