どんな人?
- 今井雅之は、陸上自衛隊出身の俳優。ライフワークとなった舞台『THE WINDS OF GOD』では原作、脚本、主演を務めた。
- 2014年末に大腸がんのステージ4と診断され、闘病の末、翌年5月に帰らぬ人となった。享年54。
- 没後、未収録発言や秘蔵写真などが網羅された追悼本『Let’s go for it!』が発売された。
俳優・今井雅之が死去
2015年5月28日、俳優の今井雅之が54歳の若さでこの世を去った。死因は大腸がん。[出典1]
▼今井雅之
https://twitter.com/jet3hajet3/status/868507205481279489
本記事では、これまで彼が歩んできた軌跡をたどりつつ、知られざるエピソードを紹介する。
舞台・映画『THE WINDS OF GOD』
1961年4月21日生まれ、兵庫県出身の今井雅之は、高校卒業後に陸上自衛隊に入隊した経歴の持ち主。[出典2]
もともと今井は俳優の道を志していたが、自衛官だった父親から、
20歳まで自衛隊の任務が務まったら認める[出典3]
と言われたことで入隊を決め、1981年に除隊すると法政大学に進学し、俳優養成所の門を叩いた。[出典2][出典3]
その後、1986年に念願の俳優デビューを果たすと、88年からは自らが原作、脚本、主演を務める舞台『THE WINDS OF GOD』の上演を重ねる。[出典2]
▼特攻服姿
https://twitter.com/slownuance0921/status/606853723143274496
同舞台は、タイムスリップした売れない漫才コンビが特攻隊員に生まれ変わるというストーリーで、91年には第文化庁芸術祭賞(演劇部門)を受賞している。
93年には劇団「エル カンパニー」を立ち上げ、そこでも『THE WINDS OF GOD』を繰り返し上演。
また95年には主演と脚色を担当した映画版が公開され、2006年に全編英語で再び映画化すると、監督としてメガホンをとった。[出典2]
特攻、徴兵に反対
幾度も上演され、映画にもなっている『THE WINDS OF GOD』は、俳優・今井雅之にとってライフワークといえる作品だ。[出典4]
同作の中で、特攻隊員役に扮する今井は、「特攻作戦」についてを、[出典4]
国による非人道的作戦だが、隊員はクレージーではなかった。そんな普通の人間に特攻をさせた戦争こそが狂気なんだ[出典3]
と語り、「徴兵制」についても反対の姿勢を見せている。[出典3][出典5]
『お金がない』って!?
今井雅之のとってのライフワークだった『THE WINDS OF GOD』だが、その内容からかスポンサー集めには四苦八苦したそうだ。[出典3]
実は今井、かつてはそんな当時の状況を表したようなタイトルのドラマに出演していた。それが1994年放送の織田裕二主演『お金がない!』(フジテレビ系)だ。[出典6]
▼織田裕二(左)
『お金がない!』で今井は高杉亘と組んで借金取りに扮し、織田裕二演じる萩原健太郎を付け回す役どころを担った。[出典6]
今井雅之の結婚
1991年、今井雅之は一般女性と結婚。
仮にAさんとする今井の妻は、彼の長い下積み時代を支えた献身的な女性だった。
2人の出会いは1985年に遡る。
当時今井が所属していた劇団の新年会に顔を出したAさんは、役者ではなくメンバーの友人としてこの場を訪れていた。
交際開始以来、舞台のために借金を重ねる今井を見放すことなく、彼が役者として大成してからも、その3歩後ろを歩くようにして共に人生を歩んできたAさん。
今井ががんを患うと、
浮気できるくらい元気になってよ[出典9]
と気丈に励ますなど、夫を心から愛していた様子だった。[出典9][出典10]
今井雅之の闘病とは?
ここからは、今井雅之の闘病の記録を振り返る。
▼在りし日の姿
https://twitter.com/gigazine/status/603762631015473152
手術を経て痩せた
2014年末、体調不良を訴え病院を訪れた今井雅之。当時は、どこの医者からも「腸の風邪」だと断言されたそうだが、最終的には、
余命3日[出典11]
とまで言われる大病が発覚し、腸の緊急手術を受けていた。[出典14][出典11]
のちにこの病について、
大腸が腐って、腸閉塞を起こしちゃってた[出典12]
と説明した今井だったが、このときにはすでに大腸がんのステージ4と診断されていた。[出典13]
術後はフルーツ以外を口にすることができなかったそうで、体重がおよそ20キロも落ち、見るからに痩せていた。[出典12]
会見で末期がんを告白
2015年5月、今井雅之は大腸がんのため出演予定の舞台『THE WINDS OF GOD』の降板を発表し、4月に行われた同舞台のゲネプロ前に記者会見を開いた。
報道陣の前に姿を表した今井はかすれ声で話し、舞台降板は自らの意思だったと明かした上で、
本当にすいません、病には勝てなかった…[出典11]
生きていてこんなにつらいことはない。役者が舞台を降りるというのは本当に悔しい[出典15]